懲戒解雇の場合の失業保険についてわかりやすく解説します。
- 懲戒解雇でも失業保険(基本手当)を受け取ることができる
- 同じ懲戒解雇でも「重責解雇」に該当するか否かで受給総額が変わる
- 「重責解雇」の場合は7日間+3ヶ月間の待期期間が必要
失業保険の受給申請は最寄りのハローワークで行います。詳細はハローワークの窓口でお問い合わせください。
この記事では、懲戒解雇の場合の失業保険について、受け取れる金額や待期期間、申請方法などを詳しくまとめています。
これから失業保険の申請をされる方は、ぜひ参考にしてみてください。
参考:“ワケアリ転職“専門キャリア相談サービスYOTSUBA
懲戒解雇でも失業保険はもらえる
懲戒解雇でも失業保険はもらえます。
離職期間中の貴重な収入源になるので、受給資格がある方は確実に受け取るようにしましょう。
ただし失業保険を受け取るには、一定の受給条件を満たす必要があります。
また一口に懲戒解雇といっても、「重責解雇」にあたるか否かによって、失業保険を受け取れる総額が変わってきます。
失業保険とは?
失業保険とは、失業者が次の就職先が見つかるまで安定した生活を送りながら再就職を目指せるように、国から支給される手当のことです。
給付は「任意」となるため、受給したい場合は自分で申請する必要があります。
また失業保険を受け取るには受給条件を満たす必要があります。
失業保険の受給内容は「重責解雇」に該当するかで変わる
懲戒解雇の退職理由には、「重責解雇」と「それ以外の解雇」の2種類に分かれます。
懲戒解雇だからと言って、必ずしも重責解雇になるわけではありません。
重責解雇に該当するか否かによって、失業保険の受給期間や待期期間などに違いが出てきます。
あなたの退職理由は重責解雇?
懲戒解雇でも、「重責解雇」に該当するかどうかで失業保険の受給期間や雇用保険の加入期間条件が変わってきます。
重責解雇に該当するケースとしては、主に以下のような場合が挙げられます。
- 刑法の規定違反
- 故意又は重過失による設備や器具の破壊
- 事業所の信用失墜
- 就業規則違反等
退職理由が「重責解雇」に該当するか否かは、会社から発行される「雇用保険被保険者離職票」の以下の部分に記載があります。
重責解雇に該当する場合は、それ以外の退職理由の方と比べて失業保険を受け取れる期間が短くなり、受給開始までの日数(待期期間)も長くなります。
失業保険の受給条件
失業保険の受給条件は以下のとおりです。
- 失業状態である
- 雇用保険の被保険者期間が一定期間以上ある
- ハローワークに求職の申し込みをしている
①失業状態である
「失業状態」について、ハローワークでは以下のように定義されています。
ハローワークに来所し、求職の申込みを行い、就職しようとする積極的な意思があり、いつでも就職できる能力があるにもかかわらず、本人やハローワークの努力によっても、職業に就くことができない「失業の状態」にあること。
引用:ハローワークインターネットサービス
つまり働ける状態であり、働く意欲もあるが仕事に就けない状態のことを指します。
逆に以下のような状態では、失業状態とは認められず失業保険も受け取れません。
- 病気やけがのため、すぐには就職できないとき
- 妊娠・出産・育児のため、すぐには就職できないとき
- 定年などで退職して、しばらく休養しようと思っているとき
- 結婚などにより家事に専念し、すぐに就職することができないとき
②雇用保険の被保険者期間が一定期間以上ある
失業保険を受け取るには、「雇用保険」に一定期間加入している必要があります。
失業保険を受け取るには、雇用保険の被保険者期間が「離職の日以前2年間に、被保険者期間が通算して12か月以上あること」が条件になります。
ただし、「特定受給資格者」または「特定理由離職者」に関しては、「離職の日以前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上ある場合」でも対象になります。
つまり「特定受給資格者」か「特定理由離職者」であれば、雇用保険の被保険者期間が短くても済むということです。
「特定受給資格者」および「特定理由離職者」とは、以下の条件に合致する方を指します。
- 特定受給資格者…倒産、解雇(自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇を除く)等により離職した者
- 特定理由離職者…有期労働契約の期間が満了し、更新がないことにより離職した者、やむを得ない事情により自己都合退職した者
大雑把に言うと、「特定受給資格者」はやむを得ない事情で離職する形になった方を指します。具体的には会社が倒産したり、リストラの対象になったりした場合の解雇です。
一方で「自己の責めに帰すべき重大な理由による解雇」というのが「重責解雇」ということになり、懲戒解雇の中でも非常に重たい退職理由になります。
③ハローワークに求職の申し込みをしている
ハローワークに求職の申し込みをすることも失業保険を受ける条件の一つになります。
つまり「失業状態」であり、かつ雇用保険の被保険期間などの条件もクリアしている状態で、ハローワークに求職の申し込みをすれば失業保険の受給資格が得られます。
いつからもらえる?懲戒解雇の失業保険の待期期間
失業保険は、申請してから需給が開始されるまでに一定の「待期期間」があります。
待期期間は、会社都合退職であれば7日間、自己都合退職であれば7日間+3ヶ月間の受給制限が設けられます。
懲戒解雇の場合、「重責解雇」に該当するケースでは自己都合退職扱いとなり3ヶ月間の受給制限が設けられます。
重責解雇に該当しない場合 | 待期期間7日間 |
---|---|
重責解雇に該当する場合 | 待期期間7日間+受給制限3ヶ月 |
どれくらいもらえる?懲戒解雇の失業保険の受給期間
失業保険を受け取れる期間も、「重責解雇」に該当するかどうかで大きく変わってきます。
失業保険の受給期間は雇用保険の加入期間に応じて変わりますが、重責解雇の場合、以下のとおり90日~150日です。
雇用保険の加入期間 | 失業保険の受給期間 |
---|---|
10年未満 | 90日間 |
10年以上20年未満 | 120日間 |
20年以上 | 150日間 |
一方で、重責解雇とはならず会社都合退職となっている場合は年齢と雇用年数によって異なり、以下のとおり90日~330日です。
雇用保険の加入期間/年齢 | 30歳未満 | 30歳以上35歳未満 | 35歳以上45歳未満 | 45歳以上60歳未満 | 60歳以上65歳未満 |
---|---|---|---|---|---|
1年未満 | 90日間 | 90日間 | 90日間 | 90日間 | 90日間 |
1年以上5年未満 | 90日間 | 120日間 | 150日間 | 180日間 | 150日間 |
5年以上10年未満 | 120日間 | 180日間 | 180日間 | 240時間 | 180日間 |
10年以上20年未満 | 180日間 | 210日間 | 240日間 | 270日間 | 210日間 |
20年以上 | ー | 240日間 | 270日間 | 330日間 | 240日間 |
参考:ハローワークインターネットサービス「基本手当の所定給付日数」
懲戒解雇の場合の失業保険の金額(支給額)
失業保険を受け取れる1日当たりの金額を「基本手当日額」といいます。
基本手当日額については、懲戒解雇の場合であっても変わりません。
原則として離職した日の直前の6か月に毎月きまって支払われた賃金(つまり、賞与等は除きます。)の合計を180で割って算出した金額(これを「賃金日額」といいます。)のおよそ50~80%(60歳~64歳については45~80%)となっており、賃金の低い方ほど高い率となっています。
出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
基本手当日額は以下の計算式で求めることができます。
(離職前6ヶ月の給与の総支給額の合計÷180)×給付率(45~80%)
※給付率は、離職時の年齢や賃金により異なります。
また基本手当日額には上限があり、令和5年8月1日現在では以下のように決められています。
30歳未満 | 6,945円 |
---|---|
30歳以上45歳未満 | 7,715円 |
45歳以上60歳未満 | 8,490円 |
60歳以上65歳未満 | 7,294円 |
出典:ハローワークインターネットサービス「基本手当について」
失業保険の申請手順・受給方法
失業保険の申請手順と受給方法について解説します。
失業保険の申請は、最寄りのハローワークの窓口で行います。
ハローワークでは、以下のような手順に沿って申請を進めていきます。
- ハローワークで求職の申し込みをする
- 雇用保険受給者説明会を受ける
- 失業の認定を受ける
- 失業保険の受給
①ハローワークで求職の申し込みをする
失業保険の申請をするための条件として、ハローワークで求職活動をすることが必要になります。
懲戒解雇された会社から離職票が届いたら、ハローワークに行って求職の申し込みをします。
その際は以下のものを忘れずに持参してください。
- 雇用保険被保険者離職票(-1、2)
- 個人番号確認書類(いずれか1種類)マイナンバーカード、通知カード、個人番号の記載のある住民票(住民票記載事項証明書)
- 身元(実在)確認書類((1)のうちいずれか1種類((1)の書類をお持ちでない方は、(2)のうち異なる2種類(コピー不可))(1)運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、官公署が発行した身分証明書・資格証明書(写真付き)など(2)公的医療保険の被保険者証、児童扶養手当証書など
- 写真(最近の写真、正面上三分身、縦3.0cm×横2.4cm)2枚 ※ 本手続及びこれに続き今後行う支給申請ごとに個人番号カード(マイナンバーカード)を提示することで省略が可能です。
- 本人名義の預金通帳又はキャッシュカード(一部指定できない金融機関があります。ゆうちょ銀行は可能です。)
出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
受給資格が決定したら、「雇用保険受給資格者のしおり」を渡されます。
その後、②雇用保険受給説明会の開催案内が来るのを待ちます。
②雇用保険受給者説明会を受ける
求職の申し込み後、約2~3週間後に「雇用保険受給者初回説明会」が開かれます。
場所は申し込みをしたハローワークです。
説明会では、「雇用保険受給資格者のしおり」と筆記用具を持参します。
- 雇用保険受給資格者のしおり
- 筆記用具
受給説明会では、雇用保険の受給についての説明があります。
また、「雇用保険受給資格者証」、「失業認定申告書」とともに、第一回目の「失業認定日」のお知らせも受け取ります。
③失業の認定を受ける
原則として4週間に1回のペースでハローワークに行き、失業の認定(失業状態にあることの確認)を行う必要があります。
失業認定は、その期間に求職活動をしていたことを証明できればOKです。
求職活動の範囲(主なもの)は、次のとおりであり、単なる、ハローワーク、新聞、インターネットなどでの求人情報の閲覧、単なる知人への紹介依頼だけでは、この求職活動の範囲には含まれません。
求人への応募
ハローワークが行う、職業相談、職業紹介等を受けたこと、各種講習、セミナーの受講など
許可・届出のある民間機関(民間職業紹介機関、労働者派遣機関)が行う、職業相談、職業紹介等を受けたこと、求職活動方法等を指導するセミナー等の受講など
公的機関等((独)高齢・障害・求職者雇用支援機構、地方自治体、求人情報提供会社、新聞社等)が実施する職業相談等を受けたこと、各種講習・セミナー、個別相談ができる企業説明会等の受講、参加など
再就職に資する各種国家試験、検定等の資格試験の受験
出典:ハローワークインターネットサービス「雇用保険の具体的な手続き」
失業認定を受ける際は、指定された日に管轄のハローワークに行きます。
そこで「失業認定申告書」に求職活動の状況等を記入して、「雇用保険受給資格者証」とともに提出します。
④失業保険を受給する
失業認定を受けた後は、失業の認定を行った日から通常5営業日で、指定した金融機関の預金口座に失業保険(基本手当)が振り込まれます。
まとめ:懲戒解雇でも失業保険の申請は忘れずに!
懲戒解雇で仕事に就けない場合、失業保険は貴重な収入源になります。
失業保険は自分で申請しないと受け取れないので、最寄りのハローワークに行って忘れずに申請するようにしましょう。
\“ワケアリ転職“専門キャリア相談サービス/
⇒YOTSUBA(よつば)公式サイト