この記事では、前科や前歴の履歴書の記載義務についてわかりやすく解説しています。
前科・前歴がある人にとって、就職活動で大きな悩みになるのが履歴書の書き方ですよね。
結論から言うと、現在一般的に使用されている履歴書であれば、前科や前歴を記載する必要はありません。
逮捕歴や補導歴があっても、不起訴(起訴猶予)などで前科がつかなかった場合は、賞罰欄があっても記載する必要はありません。
前科・前歴の履歴書記載については、知らないでおくとトラブルに発展する恐れがあります。
前科・前歴を抱えながら就職活動に臨む方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
前科・前歴は履歴書に書く?書かない?
前科・前歴の履歴書への記載義務について解説します。
まず前提として、履歴書に書く必要が出てくるのは「前科」=有罪判決が確定した事実についてのみです。
また、前科についても、履歴書に「賞罰欄」があるかどうか記載義務が変わってきます。
賞罰欄の有無で判断が変わる
現在厚生労働省が推奨している履歴書には賞罰欄がないため、前科や前歴を記載する必要はありません。
したがって、特に指定がなければ厚労省推奨の履歴書を使用するようにしましょう。
出典:厚生労働省履歴書様式例
ただし、企業によっては指定の履歴書の提出を求める場合があります。
もしも企業指定の履歴書に賞罰欄がある場合は、前科を記載する必要が生じます。
刑事弁護専門サイトでも、履歴書における前科の取扱いについて以下のような記載があります。
もっとも、たとえ前科があっても、刑が消滅すれば、履歴書の賞罰欄に記載する義務はありません。刑の消滅は、社会復帰を促進する制度ですが、刑が消滅した後も履歴書に前科を記載しなければならないとすると、社会復帰の障害になってしまうからです。
出典:刑事弁護専門サイト
つまりここまでの話を整理すると、「刑の言い渡しの効力」が残った前科があり、かつ賞罰欄がある履歴書を使用する場合には、前科を履歴書へ記載する義務があるということです。
履歴書の「賞罰欄」とは?
履歴書の「賞罰欄」は、「表彰歴」と「刑事罰」を記載する項目です。履歴書によっては、下記のように、「賞罰」と書かれた欄があります。
賞罰の「賞」は受賞歴や表彰歴を、「罰」は犯罪歴を指します。
- 「賞」に該当するもの…全国・国際レベルの大会での入賞や、国や都道府県からの表彰を受けた場合
- 「罰」に該当するもの…懲役、禁固、罰金などの有罪判決を受けた「刑事罰」
参考:マイナビ転職「【履歴書】賞罰欄の書き方|賞罰とは?基準やない時の書き方」
刑事罰を受けた経験があるなら記載義務あり
過去に刑事罰を受けている場合には、賞罰欄に記載する必要があります。
その場合は、以下のように具体的な内容を明記します。
「懲役●年、刑期終了」「罰金刑、終了」といったように、該当する罰を省略することなく書きましょう。
ただし、賞罰欄への記載はあくまで刑事罰が確定することが条件です。
逮捕されても不起訴になった場合や、まだ判決が確定していない段階の場合には記載義務はなくなります。
現在の一般的な履歴書に賞罰欄はない
なお、現在厚生労働省が推奨している履歴書の様式例には、賞罰欄の項目自体ありません。
特に企業から指定されていないのであれば、厚生労働省推奨の履歴書を使うといいでしょう。
前科はいつまで履歴書に書かなければならないのか?
前科がある場合、履歴書にいつまで記載義務があるのでしょうか?
結論から言うと、「刑の言い渡しの効力」が消滅するまでは記載義務が生じます。
刑の言い渡し効力が消滅するまでは記載義務がある
「刑の言い渡しの効力」とは、刑の言い渡しの法律上の効果です。一定期間を迎えると消滅します。
例えば執行猶予が終わったり、刑期満了から一定期間が経過したとしても、前科自体は残り続けます。
再び犯罪を犯して捜査を受けた場合、前科があることから、初犯より重い刑事責任が科せられる可能性が高いです。
履歴書への記載も同様で、「刑の言い渡しの効力」がなくなれば、前科を記載する必要がなくなります。
なお、刑の言い渡しの効力の消滅要件は以下のとおりです。
- 執行猶予付きの懲役・禁固刑:執行猶予を取り消されることなく猶予期間が経過したとき
- 執行猶予がつかない懲役・禁固刑(実刑):刑の執行が終了したときから、罰金以上の刑が確定することなく10年を経過したとき
- 罰金刑:罰金刑の執行が終了したときから、罰金以上の刑が確定することなく5年を経過したとき
上記の要件を満たしているのであれば、前科があっても履歴書に記載する必要はありません。
前科を隠しての就職は辞めた方がいい?
ここまで前科と履歴書について解説してきました。
多くの場合、履歴書には前科の記載義務がないことがお分かりいただけたかと思います。
前科はきちんと打ち明けた方がいい理由
前科は就職でバレる?バレない?の記事でもあるとおり、そもそも前科を打ち明けるべきかについては悩むところです。
前科を打ち明けることを推奨している理由ですが、後から前科が発覚した場合、退職勧告などのトラブルに発展する可能性があることが挙げられます。
前科・逮捕歴のある人の就職にもあるとおり、嘘の経歴を述べている場合は経歴詐称になりますし、仮に経歴を聞かれなかったとしても、告知義務を怠ったとして懲戒対象になる可能性があります。
また、そもそも「いつか前科がバレたらどうしよう」と心配しながら働き続けることは、想像以上に大きなストレスとなるはずです。
それでも、キャリアはこの先まだまだ続きます。
しっかりと反省し、心を入れ替えて頑張っていくと決意したのであれば、後ろめたい気持ちを抱えたまま働くことは果たして健全と言えるのでしょうか?
前科を打ち明けると、就職の難易度自体は上がるかもしれません。不採用が続けば、言わないでおこうという心理が働く気持ちもわかります。
それでもこの先、定年までのキャリアを考えた上で、前科を隠して生きるのがいいかどうか、冷静に考えてみていただけたらと思います。
【前科前歴】履歴書の書き方でよくある質問
前科前歴がある人の履歴書について、よくある質問をまとめました。
そもそも前科を隠すとどうなる?
賞罰欄のない履歴書であれば、書類を提出する段階で前科を伝える必要はありません。
しかし面接時に賞罰の有無を確認された場合は、正直に伝える必要があります。
こうしたヒヤリングを受けたにもかかわらず、前科を誤魔化して隠した場合は、経歴詐称として懲戒処分の対象となり得ます。
空白期間はどうすればいい?
前科がある方の場合、履歴書に空白期間が生まれてしまうことも少なくありません。
期間にもよりますが、空白期間はなるべく少ない方がいいので、書ける範囲で埋める努力をしましょう。
また面接では、「空白期間に何をしていたのか」が重要になります。
仕事につながるような研鑽を積んでいたというアピールができればベターです。
面接ではどのタイミングで打ち明ける?
前科のことを打ち明けるのはとても勇気がいることですが、伝えるのであればなるべく面接の冒頭がいいでしょう。
最初にネガティブな内容を伝えておくことで、面接の内容次第では残りの時間で挽回させていくことができます。
また冒頭で自ら不利な情報を打ち明ける人は非常に珍しいので、面接官によっては「ウソをつかない誠実な人だ」という評価をしてくれるケースも多いです。
書類審査が通りません。どうすればいい?
書類審査になかなか通らない場合は、履歴書・職務経歴書の書き方に問題がないかチェックしてみましょう。
書類審査に通らない方の履歴書・職務経歴書を拝見していると、どこの会社にでも通用するような抽象的な書き方になっていることが多いです。
逆に履歴書・職務経歴書の志望動機や自己PRの中で、その企業に合わせた文言を入れてあげるだけで熱意が伝わり書類通過率がグッと上がります。
他にも履歴書・職務経歴書の書き方のポイントはあります。書類通過せずに悩んでいる方は、一度プロのキャリアアドバイザーに添削してもらうと良いでしょう。
まとめ:前科があっても社会復帰は可能!
前科持ちの方の就職活動では、「履歴書」が最初の大きなハードルになります。
特に会社から指定がなければ、前科を書く必要がない「賞罰欄」のない履歴書を選ぶようにしましょう。
前科を抱えての就職活動は苦労しますが、決して不可能ではありません。
前科があっても受け入れてくれる会社は必ずあるので、地道に前を向いて頑張ってください。
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