この記事では、約10年務めた会社を懲戒解雇になった筆者の体験談を赤裸々に公開しています。
懲戒解雇になった経緯から無職の期間中にやったこと、無事にホワイト企業へ再就職できたことまで全て実体験に基づいています。同じような境遇にある方の参考になれば幸いです。
自分で言うのもアレですが、懲戒解雇になるまでは仕事もプライベートも順風満帆でした。
日本人なら誰もが知る大手企業に入社し、社内でも出世頭として期待される存在。愛する妻子にも恵まれ、いわゆる「勝ち組」に分類されるキャリアだったと思います。
しかし、自らの至らなさから刑事事件を起こしてしまい、一発で懲戒解雇になりました。
自業自得とはいえ、積み上げてきたものを全て失いました。
文字通り懲戒解雇で人生終了だと本気で思いました。
この世から消えてなくなってしまいたいほど将来に絶望していました。
この記事では、懲戒解雇という会社員としての「死刑宣告」を受けながらも人生を再建させることができた筆者の経験を、全て実体験に基づいて赤裸々に綴っています。
懲戒解雇くらいで人生は終わりません。
諦めなければ必ず再起できます。
かつての筆者と同じように人生のどん底にいる方にとって、この記事が希望を持つきっかけとなりますように。
懲戒解雇になった筆者の体験談
早速、懲戒解雇を経験した筆者の体験談について綴っていきます。
簡単に経緯をお伝えすると、以下のとおりです。
- 筆者は当時入社9年目の30歳
- 大手メディア会社の正社員(日本人なら誰もが知る有名な会社)
- お恥ずかしながらとある刑事事件を起こして逮捕
- 釈放後、すぐに人事部から事情聴取
- 刑事事件の処分を待たずに懲戒解雇が決定
- 不服の申し立ても検討し労働組合にも相談したが、「同種事案の逮捕は例外なく懲戒解雇」との回答
- その後約1か月間の就職活動の末、Webマーケティングのホワイトベンチャーに正社員で内定
- 懲戒解雇の事実は隠さずに打ち明けた上で熱意を買ってもらって採用された
懲戒解雇された当時のことを振り返ると、まさに人生で最悪な経験でした。
筆者の場合は30歳での懲戒解雇だったので、再就職活動も簡単にはいきませんでした。
どれだけ希望年収を下げても不採用ばかりで、二度と社会復帰できないのではないかという不安でいっぱいでした。
それでも最終的には36社目でようやく内定。しかも伸びしろ抜群の優良ホワイト企業だったので万々歳でした。
懲戒解雇された人間の再就職活動は予想通り厳しかったです。でも懲戒解雇の事実を正直に打ち明けた上で採用してくれる会社も確かにありました。個人的には、採用された後のことまで考えると、懲戒解雇は隠さずに正々堂々と打ち明けた上で、認めてくれる会社と出会えるまで頑張った方がいいと考えています。
懲戒解雇になった理由
上述したとおり、筆者が懲戒解雇になったのは刑事事件を起こして逮捕されたからです。
しかも有名企業の正社員だったこともあり、全国ニュースで実名報道されてしまいました。
また現在筆者は懲戒解雇などで仕事を失った方向けのキャリア支援をしていますが、懲戒解雇になった方のおよそ7割以上が刑事事件を起こしたことが理由になっています。
懲戒解雇を告げられるまで
警察に逮捕された当日、すぐに会社も知るところとなりました。
留置初日には会社の顧問弁護士が面会に来たので、そのあたりはさすが大手企業だなと思います。
筆者は逮捕から3日ほどで釈放されましたが、すぐに弁護士を通じて呼び出しがありました。
事情聴取の相手は人事部長と法務部長、次長の3人。法務部長は以前の直属の上司だったので、申し訳ない気持ちでいっぱいでした。
なぜそんな事件を起こしたのか、これだけ騒ぎを起こしたことをどう受け止めているのか、他にも悪いことはしていないかなどを事細かに聞かれました。
懲戒解雇は最も重い処分なので、会社としても闇雲に処分を下せるわけではありません。労働契約法15条には「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、当該懲戒は、無効とする」とあり、基本的にはどんな内容であっても必ず弁明の機会を与えられます。
事件発覚から約1ヶ月で懲戒解雇が決定
会社からの聴取の後、約1ヶ月後に処分の言い渡しがありました。
予想通り、懲戒解雇です。
処分が不服であれば申し立てもできるとのことで、何とか諭旨解雇にでもならないかと労働組合にも相談してみました。
しかし「同じような事件を起こした人間は100%懲戒解雇になっている」とのことで、不服申し立ては断念。
文字通り30歳で無職となりました。
余談ですが、懲戒解雇を言い渡された日の夜、初めて妻の胸で号泣しました。もちろん逮捕されたときから懲戒解雇になるのは覚悟していました。それでもどこか現実を受け入れられずにいましたが、会社から支給されたPCや名刺など全てを返却し、いよいよクビになったことを現実として突き付けられた気がして、抑えていたものが一気に噴き出したんだと思います。
懲戒解雇になったその後
懲戒解雇になった後、まず困ったのは住むところです。
前の会社の借り上げ社宅に住んでいたため、間もなく退去することとなりましたが、無職では物件を借りられるわけがありません。
一時的に妻子とは別居し、お互いの実家に身を寄せることになりました。
まだ刑事事件の処分(検察の処分)が決まっていなかったため、具体的な就職活動は何もできませんでした。
早く何とかしなければという焦る気持ちはありましたが、次の仕事を探す気にもなれず、時々ハローワークに行って失業手当の手続きをする程度。
あまり外出もせず、昼夜逆転のようなすさんだ生活を送っていました。
正直、少しでも早く就職したいと思いながらも、なるべく生活のレベルは落としたくないのが本音でした。
以前と同じレベルの収入は見込めないにしても、どれくらい年収を下げれば雇ってもらえるのかということばかり考えていました(これが間違いでした)。
今思えば、この目標もなくどうしようもない不安を抱えていた時期が一番苦しかったです。
約1か月後に就職活動を開始
とはいえ、懲戒解雇くらいで人生を諦めるわけにはいきません。
いつまでも下を向いていても意味がないので、刑事事件の処分が決まった(起訴になった)のを機に、就職活動を始めることにしました。
大手企業に勤めていた経歴こそあれ、特に資格を持っているわけではありません。頼れる人脈もゼロでした。
実際どんな就職活動になるのか想像もつきませんでしたが、ダメで元々、転職サイトに登録をするところから初めてみました。
懲戒解雇からの就職活動
懲戒解雇からの就職活動は、予想通り困難を極めました。
始めは転職サイトに登録をし、どんな求人があるのかをリサーチすることから始めました。
どこに登録すればいいのかもわからなかったため、一番有名なリクナビNEXTを選びました。
プロフィールには「懲戒解雇」とは書かず利用していたため、「スカウト」の通知もたくさん来て「意外といけるのでは?」なんて考えたりもしました。
しかし、いざ面接に行ってみると、懲戒解雇された人間への世間の厳しい評価を目の当たりにしました。
最初に面接に行ったのは、前職のスキルを生かせそうな小さな会社。年収にすると3分の1以下で、初任給よりも低いレベルでした。
面接では懲戒解雇になった事実を包み隠さず話しました。
しかし結果は不採用。条件はかなり下げ、能力的にも問題ないと思われていただけに、正直結構ショックでした。
面接官の反応は良くても不採用の連続
懲戒解雇になったことを隠すという選択もあるかもしれません。
しかし筆者の場合は逮捕されたことが実名報道されており、ネットで名前を検索すると一発でバレてしまうため、隠しようがありませんでした。
実際、面接では懲戒解雇になった経緯を正直に話すと、面接官の方は嫌悪感を示すどころか、こちらの身を案じて優しい言葉をかけてくれる方が多かったです。
「非常に誠実な方だとわかりました。能力的にも問題なく、個人的にはぜひ一緒に働きたいです」と言ってくれた方も一人や二人ではありません。
ハローワークでも感じた厳しい現実
自力で就活をしていても受かる見込みはなく、ハローワークにも相談にいきました。
それでも藁にもすがる思いだったので、プライドを捨てて相談してみることにしました。
ハローワークの担当の方は、すごく親身になって話を聞いてくれました。
しかし結論は、「あなたに紹介できる仕事はありません」。
というのも、筆者のように犯歴のある人間でも雇ってくれるのは、工事現場などのいわゆる「ブルーカラー」の仕事ばかり。
そのため、「あなたのような経歴の方は、ぜひ自力で頑張ってホワイトカラーのお仕事を探してほしい」とのことで、求人紹介を断られてしまいました。
転機になった転職エージェントとの出会い
もはやどこも採用してくれる会社なんてないんじゃないかと思うようになりました。
ちょうどリクルートに友人が勤めていたので、ちょっと相談をしてみたところ、「転職エージェントを使ってみてはどうか?」と提案を受けました。
転職エージェントなんて使ったこともなかったため不安でしたが、おすすめされたいくつかの転職エージェントに登録してみることにしました。
転職エージェントはみんな味方なので、皆さんすごく親身になって相談に応じてくれました。
そのうちとある転職エージェントの方と面談をしたときのこと。
ここでのアドバイスが大きく事態を動かしました。
「懲戒解雇になったことをしっかりと受け止め、誠実に打ち明けていることは評価できます」
「しかしあなた、正直に言って暗すぎますよ。負のオーラが出すぎています」
「反省したことを伝えるのは大事ですけど、もっと自分に自信を持って!自分の強みをアピールしていかないと、今のあなたには魅力が全く感じられませんよ」
まさに目から鱗でした。
これまで筆者は、自分が犯したことを真摯に受け止め、反省している姿勢ばかりアピールしていました。
当たり前のことですが、中途採用の面接では自分を雇ってもらうメリットを伝えなければなりません。
にもかかわらず、やらかしたことを責め、自分に一切自信が持てなくなっている状態では、採用したいなんて思える会社があるわけもなかったんです。
いつまで経っても不採用が続いていたのは、犯歴や懲戒解雇歴があるからではなく、自分自身の就職活動への意識が甘すぎるせいだと気づくことができました。
懲戒解雇になって感じたこと
実際に懲戒解雇になって感じたことはいくつかあります。
仕事なんて嫌だと思う人がほとんどだと思います。
でも懲戒解雇されて無職だったときは、通勤ラッシュでの満員電車ですらうらやましいと本気で思っていました。
懲戒解雇は自業自得なので仕方ありませんが、きっと世の中は働きたくても満足に働けない人がごまんといることでしょう。
そう考えると、少なくとも自分の意志で仕事を選び、働いてお金を稼いでいる状態というのは、十分幸せなことだと言えるはずです。
筆者が就職できたベンチャー企業は、できて数年で不安定だったため、人の出入りも激しい会社でした。待遇もさほどいいわけではなく、やはり採用に苦労していたようです。
そこへ筆者が入社することとなったわけですが、採用してくれた社長は後日「キリオさんのような経歴の方に来ていただけるのは非常に大きかった」と言っていました。
またこの社長はこうも言っています。
「経歴にバツのあるキリオさんを雇うことは、もちろんリスクはあると思っていました。正直反対した人もいます。でも、一度失敗しているからこそ、誰よりもガムシャラに働いてくれると思ったんです。そしてその姿勢がこの会社には必要だと思いました」
懲戒解雇になるような人間を、世間が簡単に認めてくれるわけはありません。
再就職に苦労するのは当然ですし、生活のレベルが落ちてしまうのもやむを得ないでしょう。
でも、そんな人間でも必要としてくれる会社は必ずあります。そして一度失敗を経験しているからこそ、また働けないことへの苦しみを味わっているからこそ、再びチャンスをもらったときには120%の働きをできるはずです。
まとめ:懲戒解雇になっても諦めないで!
懲戒解雇になると、まず間違いなく次の就職には苦労します。
懲戒解雇された人間の末路でもエピソードを紹介しましたが、世間からの冷たいバッシングも避けられないでしょう。
でも、懲戒解雇くらいで人生が終わるわけではありません。
今は人生のどん底にいるかもしれませんが、大丈夫。これ以上の底はありません。
どうか諦めることなく、前を向いて頑張ってください。応援しています。
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