- 前科がつくとどうなる?
- 前科がつくことのデメリットが知りたい!
こんな疑問にお答えします。
前科がつくと、生活を送る上で様々な障害が発生します。
- 就職が著しく困難になる
- 海外旅行先が制限されることがある
- 取得できない資格がある
- 結婚しづらくなる
- 再犯すると刑事罰が大きくなる
ほかにも前科がつくことによる細かなデメリットはたくさんあります。
この記事では、実際に前科を抱えて生活している筆者が、前科がつくことで生じるデメリットについて、実体験を交えながらお伝えしています。
前科者本人によるリアルな生活がわかる情報は決して多くありません。ぜひ参考にしてみてください。
前科がつくとどうなる?前科のデメリット
前科がつくと、仕事や私生活の面で様々なデメリットが生じます。
- 会社を解雇される可能性がある
- 就職・転職に苦労する
- 就けない職業がある
- 取得できない資格がある
- 実名報道される可能性がある
- 海外旅行に行けない国がある
- 検察・警察の記録に残る
- 再犯後の刑事罰が大きくなる可能性がある
以下、順番に見ていきましょう。
会社を解雇される可能性がある
まず大前提として、前科がつくと勤務先を解雇される可能性が高くなります。
解雇になるかどうかは勤務先次第ですが、「不起訴であれば停職で済むが、起訴されれば解雇になる」といった判断をされる企業は非常に多い印象です。
就職・転職に苦労する
前科がつくと、言わずもがな就職に苦労します。
前科を打ち明けて就職する場合はもちろん不採用の可能性が高くなりますし、前科を隠したとしてもバレることのリスクと戦うことになります。
もちろん前科を抱えた就職は簡単ではありませんが、成功例があることは確かです。
就職活動をされる方は、以下の記事も参考にしつつどうか諦めずに頑張ってほしいです。
就けない職業がある
前科がつくと、就けなくなる職業があります。
具体的には、警察官や検察官などの「官職」には二度と就くことができなくなります。
また民間でも、金融業や警備業などのコンプライアンス遵守が厳しい業界では、就職が難しくなるでしょう。
取得できない資格がある
一部の国家資格では、前科がつくと「欠落事由」となり、一定期間取得することができません。
代表的な国家資格としては、医師や教員、国家公務員、地方公務員、税理士、公認会計士、司法書士、社会保険労務士、行政書士、宅地建物取引士などが挙げられます。
各資格ごとの欠落期間などは前科による資格制限の記事でまとめているので、参考にしてみてください。
実名報道される可能性がある
前科がつくと実名報道される可能性があります。
多くの場合は逮捕段階で実名報道されるので、厳密には前科がつくかどうかはあまり関係ありません。
それでも、起訴段階や公判段階で初めて実名報道されるケースもあるので注意が必要です。
海外旅行に行けない国がある
前科の内容にもよりますが、前科があると海外旅行で行けない国も出てきます。
具体的にはアメリカやオーストラリア、カナダなどはかなり厳しく、就労ビザを取得するのも容易ではありません。
検察・警察の記録に残る
前科は警察や検察の記録として残り、何年経っても消えることはありません。
前科があると「犯罪人名簿」という帳簿に記載され、戸籍を管掌する市区町村で厳重に保管されます。
もちろん前科情報に一般人が接触することはできませんが、万が一再犯などを犯した場合にはこの記録が参照されることになります。
参考:法務省「犯歴事務規定」
再犯後の刑事罰が大きくなる可能性がある
前科があると、万が一再犯した際に刑事罰が大きくなる可能性があります。
初犯であれば事情が考慮されてある程度刑事罰が軽くなる傾向がありますが、前科を持っているとその恩恵を受けることができなくなります。
言わずもがなですが、絶対に再犯はしてはなりません。
前科がつくとできない・制限されること
前科がつくと、一定期間または生涯にわたって行動に制限が出てきてしまう場合があります。
前科がつくとできなくなることは主に次の通りです。
- 一部の外国への渡航
- パスポートの取得
- ビザの取得
- 一部の国家資格の取得
- 一部の職業への就職
- 取締役への就任
一部の外国への渡航
前科の内容にもよりますが、一部の外国への渡航が制限されます。
例えばアメリカではESTA(エスタ)、カナダではeTA(イータ)、オーストラリアではETAS(イータス)を導入しており、前科・前歴に関する質問に回答しなければなりません。
EU加盟国では、ETIAS(エティアス)という事前渡航認証システムを2025年から導入予定です。こちらも過去10年の前科情報を通知する必要があるとされています。
これらの国では、回答した前科の内容次第では、渡航許可が下りない可能性があります。
ちなみに虚偽の回答をした場合、認証自体が取り消され、今後一切、入国できなくなってしまう可能性が高いです。
パスポートの取得
海外への渡航に必要なパスポートの取得も前科によって制限されます。
旅券法13条1項3号では、「禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又は執行を受けることがなくなるまでの者」について、パスポートの発給が制限されることがあると定められています。
これは仮釈放で出所している人や執行猶予期間内の人についても同様です。
ビザの取得
パスポートと同様、海外ビザの取得にも制限が出る場合があります。
これは国や前科の内容によって対応が大きく異なるため、ビザの取得が必要になったタイミングで行政書士等に相談するようにしましょう。
一部の国家資格の取得
前科がつくと、一部の国家資格の取得ができなくなります。
詳細は前科による資格制限の記事をご参照ください。
一部の職業への就職
一方で以下の国家資格は、前科がついて時間が経ったとしても、復職することはできません。
- 警察官
- 検察官
- 裁判官
- 自衛官
上記のいわゆる「官職」の仕事は、前科があると二度と就職できなくなるので覚えておきましょう。
取締役への就任
前科がつくと、株式会社や合同会社などの「取締役」に就任することができなくなる恐れがあります。
会社法331条では、取締役になることができない「欠落事由」に該当する者として以下のように定めています。
三 この法律若しくは一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)の規定に違反し、(中略)又は金融商品取引法(中略)民事再生法(中略)外国倒産処理手続の承認援助に関する法律(中略)会社更生法(中略)破産法(中略)の罪を犯し、刑に処せられ、その執行を終わり、又はその執行を受けることがなくなった日から二年を経過しない者
四 前号に規定する法律の規定以外の法令の規定に違反し、禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わるまで又はその執行を受けることがなくなるまでの者(刑の執行猶予中の者を除く。)
出典:会社法331条
一般社団法人や一般財団法人の「理事」についても同様です。
前科があっても変わらないこと
ここまで前科がつくとできなくなることやデメリットについて、制度やルール上の観点から解説してきました。
実際、筆者は前科を背負って10年近く生活していますが、前科の影響で生活に困ったことはほとんどありません。
以下、前科があっても通常通りできることについて挙げていきます。
仕事は問題なくできる
前科があっても通常通り仕事をすることはできます。
もちろん前科がある人の就職は簡単ではありませんが、実力ややる気、人柄を評価して採用してくれる企業もあります。
学校に通うことはできる
前科があっても、学校に通うことはできます。
もちろん在学中に前科がつくような問題を起こした場合は退学処分とされる可能性が高いですが、専門学校や大学などで学び直すことは十分可能です。
自動車の運転はできる
自動車免許の取り消し(停止)処分を受けるようなことがなければ、前科があっても通常通り運転することができます。
万が一交通事故や違反があったとしても、前科の内容が交通犯と関連性のないのであれば、前科が考慮されることもありません。
選挙権・被選挙権はある
一般的には、前科があっても刑の執行が終わっているのであれば、選挙権・被選挙権は奪われません。
公職選挙法では、刑の執行が終わるまでは選挙権・被選挙権が認められないとしています。執行猶予中の場合は問題ありません。
ただし、収賄罪や公職選挙法、政治資金規正法に関する犯罪であれば、一定期間選挙権、被選挙権が停止されます。
賃貸物件を借りることはできる
前科があっても賃貸物件を借りることはできます。
ただし、前科の内容によっては貸主から断られるケースもあるため、前科情報の開示には注意しましょう。
ローンを組むことはできる
前科があってもローンを組むことができます。
ただしローンの審査はブラックボックスとなっているのが実態で、前科情報を知って審査落ちしてしまうことはあり得るので注意が必要です。
金融機関の口座を作れる
前科があっても金融機関の口座を作ることはできます。
ただし、詐欺犯など一定の経済犯や「反社会的勢力の構成員」とした認定がある場合は、口座開設を断られてしまうこともあります。
クレジットカードを作れる
前科があってもクレジットカードを作ることは可能です。
クレジットカードの審査はあくまでクレジットカード会社の基準によるものなので、前科の有無ではなく就職先や経済事情などの状況によって審査落ちしてしまうことはあります。
前科がある生活についてよくある質問
前科を抱えた生活についてよくある質問をまとめました。
前科はいつ消える?
前科がつくと「犯罪人名簿」という帳簿に記載され、戸籍を管掌する市区町村で厳重に保管されます。
こうした前科情報は警察や検察の記録として残り、何年経っても消えることはありません。
刑の言い渡しの効力の消滅要件は以下のとおりです。
- 執行猶予付きの懲役・禁固刑:執行猶予を取り消されることなく猶予期間が経過したとき
- 執行猶予がつかない懲役・禁固刑(実刑):刑の執行が終了したときから、罰金以上の刑が確定することなく10年を経過したとき
- 罰金刑:罰金刑の執行が終了したときから、罰金以上の刑が確定することなく5年を経過したとき
上記のように「刑の言い渡しの効力」が消滅すれば、制限されていた国家資格などを取得することができるようになります。
前科は就職で隠してもバレる?
一般的に前科情報を第三者が調べることはできないため、前科が就職でバレることはありません。
前科は就職でバレる?バレない?の記事も参考に、就職で前科を打ち明けるかどうか検討しましょう。
前科があると大手には就職できない?
前科があると就職が難しくなることは間違いなく、コンプライアンスへの意識が厳しい大手企業ではより難易度が上がります。
面接の回数も複数回あり、採用するかどうかの意思決定も複数人を介すため、社として納得してもらった上で採用されるのはかなりハードルが高いです。
前科があると生活保護は受けられない?
生活保護の受給要件に前科の有無は関係ありません。認定が下りれば、前科があっても生活保護を受けることができます。
生活保護を受けられるかどうかは、資産や能力などを総合的に考慮されます。
なお、年金の受給要件についても、前科の有無は関係ありません
前科があると結婚できない?
前科があることを伝えた上で相手方の同意が得られるのであれば、結婚には影響しません。
相手方の親族への理解など一定のハードルはありますが、信頼さえあれば前科の有無と前科に関係はありません。
不起訴だと前科にはならない?
前科は検察が起訴した段階でつくことになるため、不起訴であれば前科にはなりません。
前科をつけたくないのであれば、検察の処分が出る前に示談交渉などで不起訴の獲得を目指しましょう。
ちなみに、罰金刑などの略式起訴であっても前科にはなります。
まとめ:前科がついても前を向いて生きよう!
前科がつくと様々な場面で制限が生じます。
就職や海外渡航、資格取得などで不利になるため、可能な限り不起訴を目指して前科がつかない努力はしたいところです。
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