- ネットのニュース記事を削除したい!
- ネット記事の削除費用はいくらかかるの?
- 自力でできる削除依頼の方法が知りたい!
こんな疑問にお答えします。
刑事事件の被疑者として逮捕されたり、勤め先を懲戒免職になったりした場合、一般人であってもネットのニュース記事になってしまうケースがあります。
参考:実名報道で人生終了?社会復帰できない?逮捕された私のその後
ネット記事の影響は大きく、就職活動や仕事、私生活でも様々な場面で大きな支障が出てしまいます。しかし一方で適切な削除の進め方がわからない方も多いでしょう。
この記事では、ネットニュースの記事やそれに関連する情報を削除する方法について解説しています。
弁護士費用の相場や自力で削除を進める方法、また格安で削除を進められる方法も紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
この記事では、清水陽平弁護士の著書「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル〔第4版〕」を法的根拠に基づく参考資料としています。
ネットのニュース記事を削除する方法は2つ
前提として、ネットのニュース記事を削除できる方法は以下の2点です。
- 弁護士に依頼する
- 自力で削除依頼をする
ネットのニュース記事削除を進めることができるのは、弁護士もしくは自分自身しかありません。
現在日本の法律では、記事削除の要請ができるのは本人もしくは弁護士(弁護士法人)と定められています。記事削除やそれに近い行為を請け負う業者もありますが、「非弁行為」に該当する業務とみなされる可能性が高いため、そのような業者に依頼することはおすすめできません。
ただ業者によっては、「ネガティブなサイトを削除する」、「書込みした人物を特定する」と掲げている場合もあります。このような業者は、結論からいえば、「非弁行為」という違法行為を行っている疑いがあるため、依頼すべきではありません。
弁護士法72条では、弁護士または弁護士法人以外の者が、報酬を得る目的で法律事務の取扱いをすることを禁じています。
出典:「サイト別ネット中傷・炎上対応マニュアル〔第4版〕」27ページ
①弁護士に依頼する
上記のとおり、ネットのニュース記事を削除する手段の一つ目は、弁護士事務所に依頼することです。
ネット記事の削除を検討する上で最もオーソドックスな方法と言えるでしょう。
法的根拠に基づいた手段を取るため、一定の効果が期待できます。
記事削除を請け負う弁護士事務所がたくさんありますが、総じて高額な費用がかかる点がデメリットと言えます。
参考:逮捕記事の削除にかかる費用はいくら?弁護士・専門業者の相場を検証
サイト管理者に削除依頼をする業務は弁護士業務となります。弁護士法人格を持たない業者が法律事務を扱うことは「非弁行為」にあたります。
(非弁護士の法律事務の取扱い等の禁止)
第七十二条 弁護士又は弁護士法人でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。ただし、この法律又は他の法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。参考:弁護士法第72条
②自力で削除依頼をする
ネットのニュース記事を削除する二つ目の方法は、自分自身で削除要請をすることです。
ネットの記事になっている当事者本人であれば、サイト運営者に直接削除依頼をかけることができます。
ネット記事の削除を弁護士に依頼するメリットとデメリット
ネット記事の削除を弁護士に依頼する場合のメリットとデメリットを整理すると以下の通りです。
メリット |
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デメリット |
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メリット①大きな効果が期待できる
専門の弁護士に削除依頼する場合、大きな効果が期待できます。
法的根拠に基づいた削除要請を行うため、個人で申請を行う場合と比較しても多くのサイトで削除できる可能性が高いと言えます。
状況によっては訴訟に発展するケースもありますが、その場合でも代理人として任せることができます。
メリット②信頼できる
弁護士事務所という「信頼感」が非常に大きな強みと言えます。
中には「誹謗中傷」に該当することを覚悟の上で投稿している個人サイトやSNSアカウント、掲示板などもありますが、弁護士としての権威を武器に交渉をスムーズに行うことができます。
メリット③手間が省ける
弁護士への依頼契約がまとまれば、交渉自体は全てお任せすることができます。
自分で何かをする必要がないため、時間に余裕がない場合でも気にせず削除を進めることができます。
デメリット①費用が高額
ネット記事の削除を弁護士に依頼するデメリットとしては、やはり費用が高額である点が挙げられます。
逮捕記事の削除にかかる費用でもあるとおり、一般的には1記事あたり50,000円~100,000円が相場。それに加えて着手金(50,000円前後)がかかる場合もあります。
デメリット②削除に成功する保証がない
弁護士に依頼するデメリットの二つ目は、必ずしも削除に成功するわけではない点です。
弁護士はあくまで削除要請を代理で進めてくれるだけであり、最終的に削除するかどうかの判断はサイト運営者(投稿者)に委ねられます。
最近は海外サーバーを利用するなど、そこそも運営者の特定自体が困難になる場合も少なくありません。
また、最終的に訴訟に発展したとしても、削除命令が認められないケースもあります。
それでも着手金は必要となるため、お金だけがかかってしまうこともあり得ます。
デメリット③時間がかかる場合ある
弁護士経由での交渉は一般的に時間がかかるケースが多いです。
専門で請け負っている弁護士には日々多数の依頼があるため、どこかを優先的に着手できるわけではありません。
ネット記事の削除を自力で進めるメリットとデメリット
ネット記事の削除を自力で進める場合のメリットとデメリットを整理します。
メリット |
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デメリット |
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メリット①費用がかからない
個人で削除申請を進める一番のメリットは、費用がかからないことです。
弁護士に依頼する場合、1件あたり50,000円~100,000円かかるため、金銭的に余裕がない場合は自力での削除も選択肢になってきます。
メリット②すぐに削除できる場合もある
サイト運営者や投稿者、アカウント主と直接やり取りをするため、意外とスムーズに削除できる場合もあります。
いち早く削除を目指したい場合は、当事者同士でやり取りするのが最もスピーディーです。
デメリット①削除できないことも多い
ネット記事の削除を自力で進める場合のデメリットとしては、効果が不透明である点が挙げられます。
逮捕記事を削除したいにもあるとおり、特に刑事事件での逮捕など不名誉な行為が元となっている場合、自業自得である側面も強いため、交渉自体に応じてもらえない可能性があります。
場合によっては削除交渉した事実を再び公にされてしまうリスクも考えられるでしょう。
デメリット②専門知識が必要
ネット記事の削除申請には専門知識が必要です。
どのような手順でどこに申請をすれば良いのか、知識や経験がないと判断が難しい状況も少なくありません。
デメリット③手間がかかる
個人による削除申請にはかなりの手間がかかることも懸念点です。
記事数が多くなるとそれだけ煩雑になるため、時間的に余裕がないと厳しいかもしれません。
デメリット④全てが自己責任になる
ネット記事の削除は必ずしもうまくいくわけではなく、場合によっては再炎上などでかえって被害が大きくなることも考えられます。
代理人を間に立てているわけではない以上、どのような状況になっても自己責任になることは覚悟する必要があります。
ネットのニュース記事を削除できるケースとできないケース
そもそもネットニュース記事の削除を進めるには、「名誉棄損」「侮辱」「プライバシー侵害」など一定の条件が必要です。
明らかに誹謗中傷目的で書かれた投稿や、罵詈雑言を並べて名誉を棄損する内容であれば削除の対象になり得ます。
ただし、刑事事件による逮捕など公共の利害に関わる事実(公共性)であり、投稿目的が公益(公益性)で、投稿内容が間違っていない(真実性)場合は削除は困難です。
ここでは逮捕記事など公共性、公益性、真実性がある場合でも、削除できるケースとできないケースについて見ていきましょう。
削除しやすいケース
- 不起訴の場合
- 形の言い渡しの効力が消滅している場合
多くの場合、ネットのニュース記事になるのは刑事事件で逮捕された事実を伝えるケースです。
その後の捜査で不起訴になった場合は、逮捕が事実であったとしても、不起訴の事実をもって削除要請がしやすいと言えます。
また「刑の言い渡し効力」が消滅している場合(執行猶予満期、刑期満了から10年以上)、その事実をもって削除要請もスムーズに行うことができます。
削除できないケース
- 報道から間もない
- 刑事事件の処分が出ていない(捜査中)
- 刑期中(執行猶予中、服役中)
上記のように、ネットニュースの記事になってから間もない場合、削除は困難です。
刑事事件の処分が出ておらず、捜査中の案件や、執行猶予中・服役中などの場合でも交渉は難しくなります。
【サイト別】ネット記事の削除依頼方法
ここからは、個人でネット記事の削除申請をする方法について解説します。
ウェブサイトの削除依頼方法(報道機関、個人ブログなど)
テレビ局や新聞社、出版社などの報道機関、また個人ブログなどの一般サイトに対しては、問い合わせ窓口から直接連絡を取って削除要請を行います。
削除要請の理由(不起訴になった、執行猶予が満期になったなど)をはっきりと明記し、メールや問い合わせフォームから申請します。
SNSの削除依頼方法(X、YouTubeなど)
XやInstagram、FacebookなどのSNSやYouTubeのアカウントには、DMを開放しているようなら直接連絡を取ります。
DMを開放しておらず連絡が取れない場合は、各サービスの運営元に通報をして削除依頼をかける必要があります。
XやYouTubeなどのアカウント主に直接連絡する際は、再炎上のリスクがないか十分に注意が必要です。中にはそもそも誹謗中傷をすることを目的とするアカウントや、訴訟沙汰覚悟で運営しているアカウントもあるため、削除要請文の内容は慎重に吟味してください。
掲示板の削除依頼方法(5Ch、爆サイなど)
5chや爆サイなどの掲示板は、掲載されているスレッド番号、投稿IDを確認した上で、運営者に通報します。
「侵害されてた権利」を選択する必要があるので、名誉棄損やプライバシー侵害など該当する項目を選択してください。
その際、本人確認のために身分証の提出を求められることもあります。
サイト運営者がわからない場合
サイト運営者がわからない場合や、ま問い合わせフォームなどを設置しておらず連絡が取れない場合があります。
その場合は、当該サイトのサーバーを特定し、サーバー会社経由で削除依頼をかけることが可能です。
その際、侵害された権利の詳細情報のほか、本人確認のために身分証の提出を求められることもあります。
削除要請文についての注意点
各サイト運営者に送る記事削除の要請文ですが、定型があるわけではありません。自由に記載していただいて結構です。
ただし、元々は公共性や公益性などを背景に事実に基づいてネット記事にされているケースがほとんどで、決して悪意があるわけではありません。
報道機関などサイト運営者としては、削除しなければならない理由はないわけです。
したがって、一方的に権利侵害を訴えるだけではなく、あくまで削除をお願いする立場として丁重に依頼するような文面を心がけてください。
ネット記事の削除にかかる費用の相場
ネット記事の削除を弁護士に依頼する場合、相場は1件あたり50,000円~100,000円です。その他、着手金が必要となる場合もあります。
詳細は逮捕記事の削除にかかる費用はいくら?弁護士・専門業者の相場を検証でもまとめているので、参考にしてみてください。
まとめ:ネット記事は諦めずに削除しよう!
この記事では、ネットニュース記事の削除方法について解説してきました。
ネット記事は対策を取らない限り、「デジタルタトゥー」として永久的に残り続けます。
再炎上などのリスクや手間を考慮すると、費用はかかりますが専門家に依頼するのがベストです。