この記事では、前科による資格制限についてわかりやすく解説しています。
- 前科がつくと停止・はく奪などの制限がかかる資格がある
- 前科による資格制限は刑によって異なる
- 前科者でも取得できる資格もある
前科がつくと、一部の公的な資格には停止・はく奪などの制限がかかります。
この記事では、前科による資格制限を内容、停止期間など一覧表としてまとめています。
前科がついても取得できる資格も合わせて載せているので、ぜひ参考にしてみてください。
前科で資格制限を受ける資格一覧表
前科による資格制限を受ける資格を一覧表にまとめました。
資格 | 制限される刑、期間 | 内容 | 根拠法 |
---|---|---|---|
医師 | 罰金以上の刑 | 1.免許を与えないことがある 2.免除の取り消し又は3年以内の医業の停止をすることができる |
医師法4条3号、7条2項 |
保健師、助産師、看護師、準看護師 | 罰金以上の刑 | 1.免許を与えないことがある 2. 免除の取り消し又は3年以内の医業の停止をすることができる |
保健師助産師看護師法9条1号、14条1項・2項 |
歯科医師 | 罰金以上の刑 | 1.免許を与えないことがある 2. 免除を取り消し、又は期間を定めて業務の停止を命じることができる |
歯科衛生士法4条1号、8条1項 |
獣医師 | 罰金以上の刑 | 1.免許を与えないことがある 2. 免除を取り消し、又は期間を定めて業務の停止を命じることができる |
獣医師法5条1項3号、8条2項3号 |
薬剤師 | 罰金以上の刑 | 1.免許を与えないことがある 2. 免除の取り消し又は3年以内の医業の停止をすることができる |
薬剤師法5条3号、8条2項2号・3号 |
学校の校長、教員 | 罰金以上の刑 | なることができない | 学校教育法9条2号 |
一般職の国家公務員 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了まで |
1.官職に就く能力を有しない 2.受験することができない3.失職する |
国家公務員法5条3項2号、8条1項1号、38条2号、43条、76条 |
地方公務員 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了まで |
1.職員となり、又は競争試験若しくは選考を受けることができない 2.職を失う |
地方公務員法9条の2、3項、8項、16条2号、28条4項 |
一級建築士 | ①禁錮以上の刑、建築法に違反し又は建築物の建築に関する罪を犯し罰金の刑 ②刑執行終了後5年 |
1.免許を与えない 2.免許の必要的取消し |
建築法7条3号・4号、8条の2第3号、9条1項2号・3号、8条1号・2号 |
取締役、監査役、執行役 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了まで |
なることができない | 会社法331条1項4号、335条1項、402条4項 |
宅地建物取引業者 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了後5年 |
1.免許をしてはならない 2.免許を取り消さなければならない |
宅地建物取引法5条1項5号、66条1項1号 |
宅地建物取引士 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了後5年 |
1.登録を受けることができる 2.登録を削除しなければならない |
宅地建物取引法18条1項6号、68条の2第1項1号 |
建設業者 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了後5年 |
1.許可しない 2.許可を取り消す |
建築業法8条7号 |
古物商 | ①禁錮以上の刑、又は古物営業法31条に規定する罪若しくは刑法235条等に規定する罪の罰金以上の罪 ②刑執行終了後5年 |
1.許可しない 2.許可を取り消すことができる |
古物営業法4条2号、6条 |
警備業者・警備員 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了後5年 |
1.警備業を営んではならない 2.認定を取り消すことができる3.警備員となってはならない |
警備業法3条2号、14条1項 |
土地家屋調査士 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了後5年 |
1.資格を有しない 2.登録を取り消さなければならない |
土地家屋調査士法5条1号、15条1項4号 |
不動産鑑定士 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了後3年 |
1.登録を受けることができない 2.登録を削除しなければならない |
不動産の鑑定評価に関する法律16条3号、20条2号、19 状2号 |
公認会計士 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了後3年 |
なることができない | 公認会計士法4条3号 |
司法書士 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了後3年 |
なる資格を有しない | 司法書士法5条1号 |
税理士 | ①-1 禁錮以上の刑、①-2 罰金以上の刑 ②-1刑執行終了5年若しくは3年①-2刑執行終了3年 |
なる資格を有しない | 税理士法4条3~5号 |
社会保険労務士 | ①-1罰金以上の刑(社会保険労務士法等の規定により処罰された場合) ①-2 禁錮以上の刑(上記以外の法令で処罰された場合)②-1刑執行終了後3年②-2刑執行終了後3年 |
なる資格を有しない | 社会保険労務士法5条4・5号 |
行政書士 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了後3年 |
なる資格を有しない | 行政書士法2条の2第3号 |
中小企業診断士 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了後3年 |
1.登録を拒否しなければならない 2.登録を取り消すものとする |
中小企業診断士の登録等および試験に関する規則6条1項、5条4号 |
通関士 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了後3年 |
1.許可してはならない 2.許可を取り消すことができる |
通関業法6条3号、11条2号 |
生命保険募集人、損害保険代理店 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了後3年 |
1.登録を拒否しなければならない | 保険業法279条1項2号 |
業務管理主任者 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了後2年 |
1.登録を受けることができない 2.登録を取り消さなければならない |
マンションの管理の適正化の推進に関する法律59条1項3号、65条1項1号 |
保育士 | ①禁錮以上の刑 ②刑執行終了後2年 |
1.保育士となることができない 2.登録を取り消さなければならない |
児童福祉法18条の5第2号、18条の19第1項1号 |
参考:刑事事件弁護士相談ナビ
欠落期間はそれぞれの資格ごとに異なります。
「刑の言い渡し効力」(執行猶予満期、刑期満了後10年、罰金刑後5年)を過ぎれば再び取得することができることが多いです。
ただし、あくまで資格を取得する権利が戻るだけであって、刑の言い渡し効力がなくなったからといって、そのまま資格が戻るわけではありません。再び資格試験に合格する必要があります。
前科者でも取れる主な資格
前科者でも取れる資格についても整理していきます。
民間資格であれば取得可能
前科者であっても、民間資格であれば基本的に問題なく取得できます。
- ITパスポート
- 社会福祉士
- 介護福祉士
- ケアマネジャー
- 看護助手(メディカルケアワーカー(R))
- 作業療法士
- 理学療法士
- 日商簿記
- TOEIC
こうした民間資格は前科が欠落事由にならないため、制限なく取得することができます。
詳細はそれぞれの資格を統括する団体をご確認ください。
前科があるとなれない職業
前科は資格の取得だけでなく、それを必要とする職業への就職にも影響を及ぼします。
たとえば警察官や検察官、弁護士などのいわゆる「官職」の仕事は、前科がついて時間が経ったとしても、復職することはできません。
また民間企業であっても、コンプライアンスの厳しい金融業や不動産業、警備業などは特に身辺調査を念入りにされます。
詳細は前科がつくとなれない職業でまとめているので、参考にしてみてください。
まとめ:前科がつくと資格制限を受ける場合あり
前科がつくと資格制限を受ける場合があります。
ただし刑の言い渡し効力が消滅すれば、再び取得することができるものも多く、民間資格であれば前科者でも取得可能です。
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